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アンソニー・ヴァン・ダイクの「英国王チャールズ1世の肖像」
今回は前回に引き続きヴァン・ダイクの肖像画、「英国王チャールズ1世の肖像」です。別名「狩場のチャールズ1世」とも称されています。



アンソニー・ヴァン・ダイク作 「英国王チャールズ1世の肖像」1635頃/パリ・ルーヴル美術館


ヴァン・ダイクは、1632年に英国王チャールズ1世により宮廷画家として招聘され、ロンドンに住むことになります。チャールズ1世始めロイヤル・ファミリーや貴族の肖像画を数多く制作しています。モデルの人物の威厳や気品を、実像以上に描くことのできるヴァン・ダイクは重用されたのです。ルーヴル美術館にあるこのチャールズ1世は、田舎の領主のようで、決して国王の肖像のようには見えませんでした。しかしよく観るうちに、田園風景の中で屹立する紳士は、自信と威厳に満ちた王のように見え始めます。

チャールズ1世は、1625年に24歳でイングランド、スコットランド、アイルランドの王を継承しますが、幼い頃は発声と脚部の発達が遅れ、精彩に欠ける王子でした。王位継承後まもなく、カソリック教国のフランス王家から妃を迎え、国内の反カソリック派の反感を買います。さらに英国国教会を中心とした国教統一の目的で、プロテスタントを弾圧します。彼らはカルヴィン派でピューリタン(清教徒)と呼ばれ、いずれチャールズ1世と対立し内戦がおきます。結果は王党派が敗れ、チャールズ1世は1649年に処刑され、49歳で波乱の人生をとじます。

チャールズ1世自身は、芸術愛好家として知られています。とくにフランドルの画家ルーベンスやヴァン・ダイクを庇護したことで有名ですが、政治的には清教徒革命によって断罪されるという悲惨な生涯の人でした。この作品では、ヴァン・ダイクの新しい肖像画の試みに、進んでモデルになっているようです。きっとまだ政治的に安定していたのでしょう。

このようにヴァン・ダイクは正統な肖像画とは別に、狩りの場面を取り上げて王の姿を描いています。人工的な国土の多いフランドル地方に対して、英国は空と大地と木々の緑に囲まれた豊かな土地柄です。国王を田園風景の中で、生き生きとした日常の姿で描くことこそ、ヴァン・ダイクにとって新しい肖像画のスタイルの創出となったのでしょう。公式の権威発揚の肖像画に比べ、いかにもリラックスしている国王を、非公式であるにせよ絵として残すことは、チャールズ1世下におけるステュアート王朝の栄華の一面を表すことにもなるという解釈もあるようです。



アンソニー・ヴァン・ダイク作 「チャールズ1世騎馬像」16337-38/ロンドン・ナショナルギャラリー


こちらはチャールズ1世のいわば公式の肖像画といえます。狩場の肖像画から2〜3年経過しています。堂々としていかにも威厳に満ちてはいますが、どこか不自然な感じがします。馬の頭部が極端に小さく表現されています。おそらくは、実際のバランスで描写すると馬のほうが立派になり、王の威厳が損なわれるとの判断から来ているのでしょうが、ちょっと無理な印象があります。

この作品に比べれば、ルーブル美術館の「英国王チャールズ1世の肖像」は人物と動物、それらを取り囲む自然がバランスよく構図の中に収められていながら、王の威厳を保つように描かれています。鑑賞当初には印象の薄い作品でしたが、徐々に引き込まれていく絵画です。当時のチャールズ1世の私的な一面を垣間見るとともに、ヴァン・ダイクの円熟した創作活動の一端を合わせて感得できる作品ではないでしょうか。



アンソニー・ヴァン・ダイク(Anthony van Dyck)は、1599年にフランドルのアントウェルペンで裕福な家庭に生まれ、1641年にロンドンで亡くなっています。享年42歳でした。幼少の頃より画家としての才能を発揮し、16歳で画家として活動、当時ヨーロッパ中で評判だったピーテル・パウル・ルーベンスの工房に入り、ルーベンスの右腕として活躍します。1621年から6年間イタリアに滞在し、ルネサンスの巨匠たちの作品から多くを学びます。1627年にアントウェルペンに戻り、上流階級から数多くの肖像画や祭壇画の注文を受けます。1632年にはイングランド王チャールズ1世の宮廷画家としてロンドンに移住します。1638年にスコットランド貴族の娘メアリーと結婚しますが、イングランド内戦前後から英国を離れることが多く、1641年パリで重病を患いロンドンに帰ってから息を引き取りました。











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