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光と大気の風景画家ターナー

ウィリアム・ターナー作 「カルタゴを建設するディド」1815/ロンドン・テートブリテン美術館


早熟の天才画家のターナーはすでにロイヤルアカデミー正会員であり、風景画の大家としての地位を確立していました。

40歳の円熟期にとき描かれたこの作品は、ターナーの風景画のひとつの到達点といえるでしょう。

絵そのものは神話を題材にしていて、夕陽の暖色に包まれた入り江沿いに、完成した建物や建設中の建物を視て歩く王女ディドが小さく描かれています。

画面の上は夕焼けの空、下は夕陽が映る海面、そして画面奥に広がる空間が壮大な雰囲気を作り出しています。

計算されつくした完成品といえます。

古典的な伝統を継ぐ傑作ですが、ターナーはそれに満足はしませんでした。





ウィリアム・ターナー作 「戦艦テメレール」1838/ロンドン・テートブリテン美術館


1819年にイタリアを旅したターナーは当地の明るい陽光と豊かな色彩に心打たれました。

それからのターナーは陽光を、黄色の強い光源と周りの霧に柔らかく反映する黄色い円で表現することから、さまざまな色が反射しあう生き生きした太陽として表現しようとしたのです。

この作品はテムズ川で解体のために曳航されている戦艦テメレール号を、沈み行く夕陽と対比させて描かれています。

老戦艦の最期の姿を、落日が余すところなく照らしているという荘厳な光景です。

夕陽と空、テムズの水面が表情豊かに表現されています。

ターナー絵画の新境地といっていいでしょう。





ウィリアム・ターナー作 「スノーストーム」1842/ロンドン・テートブリテン美術館


1840年代になるとターナーは自然のエネルギーを光と色彩で表現するようになります。

この作品は吹雪のなか蒸気船が出航しようとするさまを描いています。

吹雪の真っ只中の渦巻きに巻き込まれたかのようなダイナミックな構成です。

ここでは蒸気船は判別しがたく、煙突から吐き出される煙と渦巻く強風に荒れ狂う雪と波のしぶきが観るものに迫り、それまでに誰もみたことのない世界が表現されています。

現代の抽象画をみているような錯覚におちいります。






ウィリアム・ターナー作 「雨・蒸気・速度」1844/ロンドン・テートブリテン美術館


これはターナーの作品としてはおそらく最も有名な作品でしょう。

1844年は蒸気機関車がイギリスで発明された年です。ターナーは早速それを絵に描いたのです。

画面の中央から右下に向かって機関車が雨と霧のなか爆走しています。当時としては大変なスピード感覚を表現したのです。

「スノーストーム」でもみられるように、ここでも近代的な発明になる機械を飲み込むような自然の大きな力を、新しい感覚で描き出しています。

ターナーの生涯にわたって追求したのは、光と大気の真相だったといってよいでしょう。

ターナーが亡くなってからおよそ20年たった1870年にこの作家の作品群にふれ、大きな影響を受けた画家にモネとピサロがいます。

彼らが後に印象派運動の指導者となっていったのはご承知のとおりです。






《ターナーの生涯》
1775年ロンドンの理髪師の子として生まれる。
1788年13歳のとき風景画家の下で画の修業を始める。
1797年ロイヤルアカデミーに油彩画を初出品。
1802年27歳の若さでロイヤルアカデミーの正会員になる。
1819年44歳のときはじめてイタリアを旅する。とくにヴェネチアの明るい光と色彩に影響を受ける。
1820年以降ターナー独特の色彩感覚で絵画を描くようになる。
1840年この頃からますます形態があいまいになり、抽象画的な作風となる。
1851年ロンドンで死去。(享年75歳)
カテゴリ:ロマン主義 | 00:48 | comments(0) | -
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