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近代美術の先駆者ゴヤ

フランシスコ・デ・ゴヤ作 「裸のマハ」1800頃/マドリード・プラド美術館


戒律きびしいカソリックの国スペインにあっては、150年ぶりの裸婦の作品です。

150年前の作品とはベラスケスの「鏡のヴィーナス」です。

「鏡のヴィーナス」では後ろ姿で横たわったヴィーナスが、天使の支える鏡を通してこちらを見ている様子が描かれています。

「裸のマハ」は裸の女性がほぼ原寸大の姿で横たわり、艶然とほほえみながらこちらを見ています。

当時の人びとならずとも、現代の鑑賞者にとっても恥じらいを覚えるような官能的な裸婦像です。

マハとは女性の名前ではなくスペイン語で「小粋な女」という意味だそうです。

人物は特定できないようですが、明らかに実際のモデルの存在が感じられるリアル感があります。





フランシスコ・デ・ゴヤ作 「着衣のマハ」1801-03/マドリード・プラド美術館


この作品はプラド美術館で「裸のマハ」のとなりに展示されています。

トルコ風の異国情緒にあふれた衣装をまとったマハです。

顔にも化粧を施されているのでしょう。全体に色彩ゆたかに表現されています。

衣服を身にまとっているにもかかわらず身体の線がほぼ完全に見てとれて、よりいっそう官能性を際立たせています。

作品としては甲乙つけがたい魅力をもっています。

作者は見るものにどちらを選ぶのか試しているのでしょうか。

これら二つの作品は、それぞれに完成度の高い傑作にもかかわらず、一対でひとつの作品のように感じられます。





フランシスコ・デ・ゴヤ作 「マドリード1808年5月3日」1814-15/マドリード・プラド美術館


動乱の時期に生きたゴヤは、前の二作のような貴族趣味的な作品とは全く異なる戦争画を数多く残しています。これはその最も有名な作品のひとつです。

絵の主題はもちろん政治的な意図を持ったものでしょうが、ゴヤがこの作品でめざしたものは処刑する者とされる者、生と死に分かたれる者、そしてその狭間に立つ者を描き分けることではないでしょうか。

銃を構えるフランス兵たちはいずれも顔が見えず、威圧的な集団として描かれています。

処刑される側は悲嘆にくれる者、動転する者、既に息絶えた者たちがさまざまに描かれています。

そうした群集の中で白いシャツの人物が両手を挙げて、処刑に抵抗するかのように描かれています。その人物のまわりが明るい光に包まれています。

この惨劇の終末の場面は容易に想像できますが、作品に表現されたこの一瞬は芸術家にしか想像できそうにありません。

光の中心にある人物の両手の平には、キリストの聖痕が刻まれているといわれています。

生死を分ける瞬間を実にドラマチックに描写しています。





フランシスコ・デ・ゴヤ作 「我が子を食うサトゥルヌス」1819-23/マドリード・プラド美術館


ゴヤが住んでいたマドリード郊外の「聾者の家」の壁に、直接描かれていた14枚の絵のひとつがこの作品です。

ギリシャ神話から題材がとられていて、衝撃的な画面になっています。

サトゥルヌスはユピテル(ゼウス)の父で、自分の子に殺されるという予言の恐怖から次つぎと生まれてくる子を貪り食ったという陰惨な話です。

14枚の絵は『黒い絵』とよばれ、暗い色調の絵ばかりです。後に漆喰の壁からキャンバスに移され、今はプラド美術館に展示されています。

この絵は食堂に描かれていたようですが、73歳を過ぎたゴヤの心にはどんな暗い闇が棲んでいたのでしょうか。

180年以上前に描かれた絵とは思えないほど、激しいタッチの鮮烈な表現です。



ロココ調の明るい華やかな作品から、時事的なテーマでドラマチックな作品、そして陰惨で暗い作品、さらには解釈が不可能に近い抽象的な作品まで、ゴヤの作品は多岐にわたっています。

ゴヤは時代の様式に囚われずに、自身の感性に従い時代を超えて激しく生き抜いた芸術家なのでしょう。

そこにゴヤが近代美術の先駆者たる所以があるのです。






《ゴヤの生涯》
1746年スペイン北東部サラゴサ近郊で生まれる。
1760年14歳のときから絵画の修業を始める。
1770年イタリア各地を旅行する。
1775年マドリードの王立タピストリー工場のための下絵描きの職を得る。
1789年43歳にしてカルロス4世の宮廷画家となる。
1792年原因不明の重病により聴力を失う。
1819年マドリード郊外の「聾者の家」といわれる別荘に移り住む。
1824年弾圧から逃れるためフランスのボルドーに転出する。
1828年ボルドーにて死去。(享年82歳)
カテゴリ:ロマン主義 | 00:37 | comments(0) | -
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