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新古典主義の皇帝画家ダヴィッド

ジャック=ルイ・ダヴィッド作 「ホラテウス兄弟の誓い」1784/パリ・ルーヴル美術館


この絵はダヴィドが36歳にして、初めて国王ルイ16世から注文を受けて制作された作品です。

古代ローマ建国時代の歴史の一場面を絵にしています。紀元前7世紀ローマと隣国アルバロンガとの戦いで、勝敗の最終決戦をそれぞれの国の代表三人の決闘で決めることになったのです。

絵はローマ側代表の三人の兄弟が父親に誓いを立てている様子ですが、右側にはこれから起こるであろう悲劇を嘆いている女性たちが描かれています。

市民の愛国心と忠誠心がいかに大切かをテーマに、揺るぎのない構図と明瞭なデッサンで表現しています。

このように古典の歴史話を威厳に満ちた表現で、かつ理想的な構成で再現することを新古典主義といわれますが、この作品はまさにその始まりの作品といわれています。

現代のわれわれには、古代演劇の一場面が堅牢な構成と描線で描かれていて、感情の入り込む余地が無いように思われます。

そのような印象こそが作者の意図するところであり、歴史の意味に永遠の普遍性を与えて「理想の美」を追求した結果といえるのです。






ジャック=ルイ・ダヴィッド作 「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」1800/フランス・マルメゾン城国立美術館


1789年から1799年にかけてフランス革命が起こり、ダヴィッドは政治に積極的に参加し、美術行政にも携わりました。また政争に巻き込まれて投獄もされました。

その間ナポレオンはかずかずの軍事的な勝利により、力を増大させていました。ダヴィッドをはじめ、当時の著名画家の多くがナポレオンの肖像画を残しています。

ダヴィッドのこの作品は、ナポレオンのイタリア遠征におけるアルプス越えを英雄伝説のひとつとして仕上げています。

ローマ時代の「ハンニバル」、西ローマ帝国の「カール大帝」そして「ボナパルト」の銘が左下の岩に刻印されています。

ナポレオンが実際にアルプス越えときに乗ったのは、白馬ではなく騾馬だったという逸話があります。

風貌、衣装といい、白馬といいまさに英雄美化の作品です。

これと同じタイトルのダヴィッドのナポレオン騎馬像が、他に三作残っているということです。さらに理想を求めて描きつづけたのでしょうか。






ジャック=ルイ・ダヴィッド作 「レカミエ夫人の肖像」1800/パリ・ルーヴル美術館


新古典主義では風景画や肖像画を一段低いジャンルに位置づけられていました。肖像画は主に生活のために描いたようです。

この作品は当時パリの社交界の花形であったレカミエ夫人の依頼で、ダヴィッドが描いた有名な肖像画です。

レカミエ夫人がこの絵を気に入らずに受け取りを拒否したため、結局未完成のままにダヴィッドが所有していたようです。

開放的な部屋着に身を包み、リラックスした姿勢で舟の形をした寝椅子に横たわっています。

白い古代風の衣装に加え、椅子や燈台の優雅なスタイルや左上方からの柔らかな光が、当時サロンで随一の美貌を謳われた夫人の洗練された清楚な姿をよく映し出していると思いますが、どうして夫人はこの絵を拒否したのでしょうか。

これはダヴィッドの理想のレカミエ像であって、決してレカミエ夫人本人の望むものではなかったということだったのでしょう。

後にこの絵に描かれた寝椅子をレカミエと称しているようですが、ダヴィッドが描いて有名になりその名が後世に残ったわけですね。






ジャック=ルイ・ダヴィッド作 「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」1806-07/パリ・ルーヴル美術館


ルーヴル美術館で最も有名な絵のひとつです。大きいことでも傑出しています。

1804年5月ナポレオンは皇帝となり、12月にノートルダム寺院で戴冠式が挙行されました。ちなみにベートーヴェンの「英雄交響曲」がこの年に完成します。

1807年ダヴィッドはこの歴史的な場面をまさに渾身の力で完成させています。実際の戴冠式よりずっと美化された戴冠式にナポレオンは大喜びしたといわれています。

この歴史的大作の完成直後に同じ戴冠式の第二作目の制作が着手されたそうですが、完成したのは長い年月の後、1815年ナポレオンが失脚しダヴィドがベルギーに亡命した最晩年のころです。

現在その作品はヴェルサイユ宮殿に飾られています。

新古典主義の美術を古代の歴史画で先達したダヴィッドですが、ナポレオンとの出会いにより、ナポレオンの歴史的な場面を荘厳な歴史画にし仕上げる機会に恵まれたといってもよいでしょう。

そして絵の完成後200年経った現在、まさに壮大な歴史画としてわれわれに迫っています。








《ダヴィッドの生涯》
1748年パリの商人の子として生まれる。ロココ絵画の大家フランソワ・ブーシェは母親の従兄弟。
1764年16歳のときにジョゼフ=マリー・ヴィアンに師事する。
1774年26歳でローマ賞を受賞。
1775年イタリアへ留学。以後1780年まで、イタリア古典美術の研究を続ける。
1784年ルイ16世より絵画を注文される。「ホラテウス兄弟の誓い」はそのときの作品で、新古典主義の最初の作品とみなされている。
1789年フランス革命が起き、ジャコバン党員として参加する。
1792年国民議会議員となる。
1804年ナポレオン皇帝の主席画家に任命される。
後年ナポレオンが失脚した後、ベルギーのブリュッセルに亡命する。
1825年ブリュッセルにて死去。(享年77歳)

カテゴリ:新古典主義 | 10:35 | comments(1) | -
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コメント
拝見しました。ジッコさんの造詣の深さを垣間見ることが出来ました。
| mayumi hisamathu | 2008/04/14 12:03 AM |
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