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ロココ時代の異端画家シャルダン

ジャン=バプティスト・シメオン・シャルダン作 「赤えい」1728頃/パリ・ルーヴル美術館


シャルダン29歳のときの作品、シャルダンが世に認められたいわば出世作です。

この作品はまず“青年絵画展覧会”に出品され、次いで王立アカデミーの入会選考作品として提出されて異例の早さでシャルダンは正式会員として認められたそうです。

画面中央の“えい”は内臓をあらわにして、虚ろな表情で何かをうったえるかのように壁に吊るされています。

左には、ネコが毛を逆立てて牡蠣殻の上をそろそろと、まだ生きていてピクピク動く魚に狙いを付けているかのようです。

右手には、白布と銅鍋そして黒光りする取っ手付の壺が配置され、全体に台所用品や食材がところ狭しと描かれています。

画面には宗教的、神話的、寓意的意味はいっさいありません。テーブルの上にあるものを渾身こめて描いているだけです。

生々しい魚や貝、猛々しいネコ、質感のある白布や黒壺などが観るものを画面の中へ引き込みます。

きっと当時の人びともこの静物画の中のドラマチックな迫力に魅了されたことでしょう。






ジャン=バプティスト・シメオン・シャルダン作 「銅製の給水器」1734/パリ・ルーヴル美術館


作品そのものは小さいもの(28.5×25cm)ですが、描かれた給水器は大きなもので人の肩ほどの高さがあります。

堂々とした給水器です。銅の質感、使い古された感じがよく表わされています。

シャルダンにかかるとこれらの日常生活の道具類が、なにやら性格をもった人物のようにも感じられます。

まるでこれから舞台に出演するために出番を待つ老練役者のようです。

事実、給水器や右下の黒い壺はシャルダンの風俗画や静物画に、名わき役としてたびたび登場しています。







ジャン=バプティスト・シメオン・シャルダン作 「食前の祈り」1740頃/パリ・ルーヴル美術館


1740年のサロンに出品され、ルイ15世に献上された作品です。

つつましやかな市民生活の一場面を描いた作品、姉妹が遊びをやめて食事を始める前に祈りを捧げる情景が描かれています。

温かいスープを母親がそれぞれの小皿に分けながら、小さい妹のほうに向かって食前の祈りを促しています。

柔らかい赤茶系の色調が画面全体にいきわたっています。そして質素ながらゆったりしたドレスを身にまとった母娘たち、大皿から湧き立つスープの湯気、右下の暖房具にみえる赤い火がいかにも暖かい空気をかもし出しています。

静かで優しい雰囲気のなかに当時の生活感が自然に伝わってくる名画です。

17世紀フランドルの風俗画とも異なり、シャルダン特有の暖かさの中にも威厳のある風俗画といえるでしょう。

ところで小さい妹は低い椅子に坐りながら、どのようにしてテーブルのスープをいただくのでしょうか、余計なことですが気にかかるところです。






ジャン=バプティスト・シメオン・シャルダン作 「葡萄と石榴」1763/パリ・ルーヴル美術館


晩年期に達したシャルダンはかずかずの風俗画や肖像画を制作した後、再び静物画を描くようになっていました。

この作品はシャルダン64歳のときの静物画です。

はじけた石榴ともぎたてのみずみずしい葡萄が主たるテーマですが、真ん中の白い陶製の水差し、ワインの入ったグラスなど質感の異なる素材を組み合わせて、全体を立体的に構成しています。

テーブルからはみ出た葡萄の房や果物ナイフが奥行きを強調しています。

シャルダンの静物画は題材がどのようなものであれ、決して日常生活から遠く離れることなく、いつも身の回りで眼にするものを愛情をもって優しく表現しています。

それまで宗教画や歴史画、神話画などに比べて低い位置の静物画に、シャルダンは力を抜くことなく真正面から取り組み、静物画の存在意義を確立したといっていいでしょう。

後世のマネやセザンヌが、シャルダンから学ぶことが多かったといわれています。






「日よけをかぶる自画像」1775/パリ・ルーヴル美術館


シャルダン76歳のときのパステルによる自画像です。

シャルダンは、軽妙で優雅で装飾的で享楽的なサロンに基盤を置くいわゆるロココ美術とは異質な世界を描いています。

シャルダンの力量が並外れていたために、ロココ趣味の貴族や富豪たちにも賞賛されたのでしようか。

それともロココ時代にはサロン的な価値観と、次代に到来する写実に対する価値観が同時に混在してたのでしょうか。

シャルダンというひとりの天才が、次代に先駆けていたとするのが結論ではないでしょうか。









《シャルダンの生涯》
1699年家具職人の子としてパリに生まれる。
1718年頃から本格的に画の修業を始める。
1728年“青年画家展覧会”に出品した「赤えい」が評判を呼び、同年王立アカデミーに入会を許される。
以降、食器、食物、果物などの日常の事物を中心に描いた静物画にかずかずの名品を残すとともに、庶民の日常に取材した風俗画、そして風俗画的な肖像画を独特の視点で描いて数多くの傑作を制作する。
1779年パリで死去。(享年80歳)
カテゴリ:ロココ | 11:16 | comments(0) | -
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