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静謐と光の画家フェルメール

ヨハネス・フェルメール作 「牛乳を注ぐ女」1658頃/アムステルダム・国立美術館


17世紀のオランダ絵画の代表的画家フェルメールの傑作のひとつです。2007年の秋にオランダの風俗画とともに来日しています。

フェルメールの作品のなかでも人気では1,2を争う作品です。

明るい柔らかな光を浴びて、テーブルの上にはたくさんのパン、食器には新鮮な牛乳が注がれています。召使いは働き者で、健康そのものです。観る者を豊かな気分にさせてくれる絵です。

人気の理由はそれだけでしょうか。もっと隠された理由があるような気がします。

たとえば、窓の格子で分かるように厳密な遠近を感じさせている一方、奥の白壁と銅器が細かくピントが合っていて、人物はややぼかし気味になっています。そしていちばん前のパンは白い点描で光の反射を強調しています。

通常の遠近感とは異なる不思議な感覚があります。

よく観察すると、テーブルの形も正方形や長方形でもなく、台形か五角形かのように見えます。パースペクティヴの錯覚を感じます。

そうした不思議な部分も、全体の統一された調和の中でひとつの起伏のような役割を担っているのでしょう。一見では不自然さは感じません。

しばらく眺めているうちに、人物が動いたように感じたり、手前のパンがキラッと光ったり、壁の表面が気になったりします。

時間が静止した静かな空間として表されているにもかかわらず、生活する現場の温かい空気を感じさせるような実在感を感じます。

それぞれ観るひとによって、感じ方はいろいろあっていいのでしょう。とにかく魅力のある絵です。








ヨハネス・フェルメール作 「デルフト眺望」1660頃/ハーグ・マウリッツハイス美術館


美しい風景画です。フェルメールの風景画はこの作品を含めてたった2作品しか残存していません。

特に空が美しく描かれています。空と川の間にフェルメールの故郷の町デルフトの中心部が、そして手前の川原には二人の女性が話合っています。さらに左には4人の人物が描かれています。

雲間からの光が街の建物を照らし、水面には建物と係留されている船が大きく影を落としています。澄み渡った大気と街の息遣いが感じられます。

フェルメールはこの絵を仕上げるにあたって、あえて現実の建物の向きを変えているとか、右端の川面に映る影が実際より長いとかいわれています。フェルメールにとっての理想の風景画を作り上げたのでしょう。

完成当初から評判が高く、高値で取引されたそうです。また20世紀のフランス文学を代表する作家プルーストは、この絵を観て絶賛したそうです。作品『失われた時をもとめて』の中にも登場しています。








ヨハネス・フェルメール作 「真珠の首飾りの少女」1665頃/ハーグ・マウリッツハイス美術館


この作品もまたフェルメールの有名な人気作品です。別名「青いターバンの少女」ともいわれています。3,4年前にはこの絵にまつわる映画が公開され、話題になりました。

民族風の衣装のあどけない少女が、ふとこちらに顔を向けた瞬間を捉えています。

何故こちらを向いたのか、何を思っているのか、いったい誰なのか、大きな真珠の首飾りとターバンは何を意味するのか、絵を観た刹那にさまざまに想いがめぐります。

このような謎めいた感想が、少女の愛らしさとあいまって世界中の人を魅了することになったのでしょう。

ニューヨークのメトロポリタン美術館に、この作品と同じポーズであどけなく笑みを浮かべた少女の頭部像がありますが、この作品ほどの強い印象はありません。







ヨハネス・フェルメール作 「レースを編む女」1670頃/パリ・ルーヴル美術館


フェルメールの現存する34〜6作品でもっとも小さい(24×21cm)作品です。スペインの鬼才ダリを始め、印象派の巨匠たちがこの絵を絶賛しています。

実際にサイズが小さいが故にこの作品を観るわれわれもまた、画枠のなかに意識を集中して、レース編みに集中している少女を覗き見るかたちになります。

さらに画面のなかでは、まず前景でクッションから白と赤の糸が流れ出しています。中央では少女が指先をそろえて慎重に糸を通しています。そして背景は質感のある壁が優しい光で少女の輪郭を際ださせています。

日常生活のありふれた情景を凝縮しています。そして少女の息を詰めた一瞬を印象深く表現しています。

「牛乳を注ぐ女」やこの作品が、勤勉に家事をこなすという教訓画とも受け取られますが、フェルメールは日常のありふれた場面を切り取り、自身の理想の美の世界を再構築しているように思えます。

はたして小さい画面でこのようなモチーフを扱うことで、フェルメールが観るものをコントロールしているのか知る由もありません。








《フェルメールの生涯》
1632年オランダ、デルフトに生まれる。父は画家たちの聖ルカ組合に画商として参加していた。
1653年結婚するとともに聖ルカ組合に加入する。
1662年聖ルカ組合の理事に選出される。
1663年引き続き聖ルカ組合の理事に選出される。
1670年聖ルカ組合の理事に選出される。
1671年引き続き聖ルカ組合の理事に選出される。
1675年デルフトにて死去。(享年43歳)
カテゴリ:バロック | 00:14 | comments(1) | -
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コメント
フェルメールの絵を楽しみに待っていました。
特に「青い・・・少女」は引き込まれます。

彼女の右側の頬に光が当たっているのに、
左の耳につけた真珠の輝きが、不自然とか
批評されているようですけど、あの真珠の輝きは
彼女の心の輝きにも見て取れます。

映画を観てそんな感想を抱きました。
| 四葉のクローバー | 2008/03/12 1:37 PM |
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