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ジュゼッペ・アルチンボルドの連作「四季」
 
さて今回は、ユニークな作品を観ていきたいと思います。一度観たら忘れられないほど、強い印象を与えてくれます。皆さんもご覧になったことがあると思います。春夏秋冬の四季のそれぞれを、擬人化した肖像画として制作されています。ちょっとグロテスクな感じがしますが、よくみると細かく、花や野菜、果物、木々が描かれ、その構成の巧みさに感心してしまいます。

それでは、ジュゼッペ・アルチンボルドの連作「四季」を観ていきましょう。









ジュゼッペ・アルチンボルド作 連作「四季」(春)1573/パリ・ルーヴル美術館




作者は、16世紀後半にイタリア・ミラノで活躍した、ジュゼッペ・アルチンボルドです。当時のイタリア美術界は、盛期ルネサンスを過ぎ、後期ルネサンスともマニエリスムともいわれる時期でした。この連作「四季」は、いくつものヴァージョンがあり、現在ウィーン美術史美術館にある、1563年作とされる連作「四季」(秋は消失)が最古のものとされています。ここに紹介する「四季」はルーヴル美術館のものです。


頭部は、春の花々で構成され、衣服は草や野菜類で埋め尽くされています。血色のよい、健康そうな若者のプロフィールが、かぐわしい草花で形作られています。春を人物で表せば、このような若者になるのでしょうか。若者といっても、若い女性かもしれません。









ジュゼッペ・アルチンボルド作 連作「四季」(夏)1573/パリ・ルーヴル美術館




こちらは、夏です。胡瓜や茄子、たまねぎ、さやえんどう等の野菜と、さくらんぼ、桃、野いちご等の果物で構成されています。顔が立体的に形作られていて、遠目に見たときと、近くで見るのとの差異が際立っています。胸飾りは、アーティチョークでしょう。当時すでに盛んに食卓に供されていたものと思われます。

衣服の繊維は何で出来ているのでしょうか。麦わらでしょうか。カラーのところにジュゼッペ・アルチンボルドの署名が、肩のところには、制作年とおぼしき、1573の数字が織り込まれています。果物、野菜、麦わらの織り込みが、実に精緻に描き込まれています。









ジュゼッペ・アルチンボルド作 連作「四季」(秋)1573/パリ・ルーヴル美術館



この秋の作品には、カボチャや葡萄に、栗、きのこ、リンゴ、洋梨ほか、当時の見慣れない野菜類も描き込まれています。頭髪に見立てた葡萄の房が、効果的です。衣服には、作物畑の柵木でしょうか、質感がよく出ています。

この作品をふくめて、連作の4つの画に描かれている花の枠飾りは、後年に描き加えられたそうです。よく見ると、確かにタッチが異なっています。









ジュゼッペ・アルチンボルド作 連作「四季」(冬)1573/パリ・ルーヴル美術館



冬は、他の3作品と異なり、果物や野菜、花々の寄せ集めではなく、木の擬人化になっています。老人を描いているようです。口のところは何で作られているのでしょう。きのこかなにかでしょうか。古木が老人に変身です。古木といっても、木の根っこかもしれません。鼻や耳は、枝が折れて、表皮がめくれています。首筋のこぶや皺、まばらな無精ひげは、老人の年齢を感じさせます。胸元の、かんきつ類らしい果物が、画面に潤いを与えてくれてます。

衣服のムシロの編みこみに、紋章らしきものが判別できます。この連作「四季」は、アルチンボルドが仕えていた、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン2世が、ザクセン選帝侯アウグストに贈ったものといわれています。紋章は、二人のいずれかに関係するものでしょうか。詳しくは分かりません。




アルチンボルドの作品は、その後のバロック絵画の興隆などにより、忘れ去られてしまい、20世紀にはいって、シュールレアリスムの画家たちから、再評価されたということです。確かに、造形的には超(非)現実的なイメージがありますよね。連作「四季」以外に、大気、火、大地、水を擬人化した「四大元素」や、「料理人」や「庭師」のように、天地を逆にすると人物像に見える、騙し絵の静物画などの作品があります。






さて日本でも、歌川国芳(1798ー1861)という江戸時代の浮世絵師が、「寄せ絵」とよばれるトリックアートの人物画を描いています。国芳がアルチンボルドの作品を知っていたかどうかは、はっきりしませんが、江戸時代の浮世絵に、からくり図案のジャンルがあり、日本独自の造形文化があったことは確かです。











ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)は、1527年に北イタリアのミラノに、画家の息子として生まれ、1593年にミラノで亡くなっています。享年66歳でした。最初はステンドグラスのデザインや、フレスコ画、タペストリーの下絵などの宗教画を手がけていました。1562年に、神聖ローマ帝国のフェルディナント1世の宮廷画家となり、後を継いだマクシミリアン2世、さらに孫のルドルフ2世の三代の皇帝に仕えました。宮廷では、画家の仕事ばかりでなく、衣裳のデザインや、祝典の企画、水力技師の仕事もこなしたそうです。

マニエリスム(Maniérisme)は、盛期ルネサンスとバロック美術の間の美術をさし、手法とか様式を意味する、イタリア語のマニエラ(maniera)が語源とされています。とくにラファエロやミケランジェロの手法を、最高のものとして、絵画に多用する様式をいい、イタリアで多くみられました。

神聖ローマ帝国は、中世においてドイツからイタリアを含む、広域の政体をさします。選帝侯らが皇帝を選挙する帝国でしたが、1493年に、ハプスブルグ家のオーストリア公マクシミリアン1世が、父から皇位を継承し、ローマでの戴冠をせずに即位することで、ハプスブルグの、そしてドイツの帝国として位置づけられました。孫のフェルディナント1世の頃には、ハンガリー王国も支配下に置くことになります。

歌川国芳は、江戸時代後期の浮世絵師で、葛飾北斎や歌川広重と同時代のひとです。1798年に江戸日本橋の染物屋に生まれ、1861年に亡くなっています。浮世絵師としては、さまざまなジャンルにわたって活躍し、猫をはじめ動物を、擬人化した作品を多く残しています。「寄せ絵」のような遊び心のある作品も、多くあります。

寄せ絵は、江戸時代のからくり図案(工夫、趣向をこらしたデザイン)の一種で、たとえば人体を寄せ集めて、人物の顔を表現するとか、ある物を寄せ集めて別の物を表現した絵のことをいいます。西洋美術では、トリックアートあるいは、トロンプルイユ(騙し絵)とよばれる、眼の錯覚を利用して、観る人を楽しませる工夫のある絵のジャンルがあります。






ルネサンス期は、人類史上において最高の名画が、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロの三大巨匠をはじめ幾多の巨匠によって、数多く制作されました。ティッツィアーノ、ティントレットと同時代に生きた、このアルチンボルドもまた、想像力の極致といってもよい多くの名画を、われわれに残してくれたのです。この連作「四季」は、他の作品とともに忘れられない、印象の強い傑作です。













カテゴリ:マニエリスム | 21:47 | comments(0) | -
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