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フランソワ・ジェラールの「プシュケとアモル」
 

このところ、艶かしい作品が続きましたので、今回は乙女チックなといいますか、可愛いらしい恋物語の作品を観ていきましょう。フランソワ・ジェラールの「プシュケとアモル」です。






フランソワ・ジェラール作 「プシュケとアモル」1798/パリ・ルーヴル美術館




この作品は、新古典主義の大家ジャック・ルイ・ダヴィッドの弟子、フランソワ・ジェラールが、1798年のサロン・ド・パリに出品したものです。発表当時は不評でしたが、一部の若手の画家たちからは高評価を得て、後に新古典主義美術をひとつの方向へと導くことになった作品といわれています。

王女プシュケが、彼女には姿の見えない愛の神アモルに接吻され、戸惑いと驚き、そして恥じらいのようすを見せている情景が描かれています。主題は、ローマの古代神話に出てくる、プシュケ(魂)とアモル(愛)の恋物話ですが、人間の魂が神の愛を求める寓話として考えられ、いわゆるプラトニック・ラヴを示唆し、ネオプラトニズムを象徴するものとされています。

ダヴィッドは、古代ギリシャ・ローマの様式に美の規範を求め、理想美あるいは形式美を追求しました。その弟子のジェラールは、この作品で、さらに繊細な官能美を表現しました。プシュケやアモルのそれぞれのポーズ、あるいは細やかな感情を示唆する、しなやかな手足やそのしぐさ、光り輝く肌の色に、この作品の特徴を見ることができます。

ジェラールは、サロンにおけるこの作品の不評からか、このジャンルの主題を追求することなく、後に肖像画家として成功を収めることになります。








絶世の美女として評判の高いプシュケは、アモルに抱かれて接吻されても、相手の姿が見えないため、焦点の定まらない表情をしています。







アモルを見ることができないながら、異常な状態を気配で感じ、気恥ずかしさのあまり、思わず手を胸元にあてるプシュケです。

アモルは、美の女神アフロディテの息子ですが、プシュケの評判に嫉妬した母親の命で、プシュケに近づき、恋ができないように鉛の矢を射ろうとしました。しかし誤って金の矢の先で自らを傷つけ、目の前にいるプシュケを恋してしまうのです。

アモルは、プシュケを自らの宮殿に連れて行き、正体を隠して、姿を見ないという約束で、暗闇の夜だけ一緒の生活を始めます。ふたりは幸せな日々を送っていましたが、夫は恐ろしい怪物だと、姉たちの言葉に、疑いをもったプシュケは、寝込んでいたアモルの姿を、ローソクの明かりで見てしまいます。アモルは、約束を破られたことに怒り、落胆して、宮殿を消滅させ、自らも消え去ってしまいます。

今度は、プシュケがアモルを探し求め、アフロディテを訪ねます。アフロディテは、プシュケに過酷な試練を課し、ふたりの仲を裂こうとしますが、最後には、めでたく結ばれて、プシュケも永遠の命を授けられて神になります。そしてふたりの間には、ウォルプタス(Voluptas)という女の子が生まれます。ウォルプタスは、喜びを表す意味だそうです。

この話には、人間の魂は、神の愛と結ばれることによって、はじめて救われ、幸せをえるという寓意と同時に、疑いの心をもつと、恋愛は成就しないという寓意も含んでいるように思います。今わたしたちは、このジェラールの作品から、直接に寓話の筋を想像ことができませんが、当時の教養のある鑑賞者たちは、そのような寓意を、容易に読み取ることが可能だったのでしょう。



フランソワ・ジェラール(François GÉRARD)は、1770年にローマで生まれ、1837年にパリで亡くなっています。父はフランス人で、母はイタリア人です。15歳のときに、フランス新古典主義の巨匠ジャック・ルイ・ダヴィッドのアトリエに入門します。実力を発揮し、ジロデ、グロとともに3Gといわれ、アカデミーをリードしました。歴史画や神話画、とくに肖像画に傑作を多く残しています。

プラトニック・ラヴ (Platonic love)は、肉体的ではなく精神的な愛をいいます。プラトニックとは、古代ギリシャの哲学者プラトンが考えるような、という意味になりますが、プラトンが考えたのは外見よりも精神に惹かれる愛、あるいは特定の個人への愛より普遍的な美を愛することをさしたといわれています。一般的には禁欲的、精神的な愛をいい、神に対する愛をいうこともあります。

ネオプラトニズム (Neoplatonism) は、プラトンの教説を追随、継承した説を採り、プラトン以後に研究された主義や思想をいいます。紀元3世紀、そしてルネサンス期に隆盛になりました。本来のプラトンの思想と区別して、ネオプラトニズムと呼ばれています。とくに15世紀に、メディチ家を中心に研究が盛んになり、ルネサンス文化に多大な影響を及ぼしたとされています。

プシュケ(Psyche)は、ギリシャ語で、魂や心を意味します。ギリシャ神話に登場する人間の美女の名前で、その美女は苦難の末に神のアモル(愛)と結ばれ、信じる心の大切さを恋人たちにささやく神になったとされています。また、プシュケはギリシャ語で蝶の意味もあり、プシュケ像のそばに蝶が舞っていたり、背中に蝶の羽をつけた姿で美術作品に登場しています。

アモル(Amor)は、ギリシャ語ではエロス(Eros)といい、性愛や愛の神をいいます。ローマ神話ではクピド(Cupido)といい、やはり愛の神をいいます。アモル、エロス、クピドは同義語として使われる場合がありますが、それぞれのニュアンスに違いがあります。








カテゴリ:新古典主義 | 10:38 | comments(2) | -
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コメント
はじめまして。
ブログを拝見しました。
わかりやすい解説で、特に最後の画家のプロフィールや用語解説は絵を理解する上で助かります。
私のブログでムッシューPさんのブログを紹介させていただいてもいいでしょうか。
「プシュケとアモル」の絵も使わせていただきたいのですが…。
| アモル | 2009/11/06 9:23 PM |
一瞬、このブシュケとアモルの美しい肢体に惚れ惚れとしました。 透けるような白い肌、すべすべとした肌触り、均整の取れた手足に余分な贅肉も隆々とした筋肉もついていない
中性的な体に、神々しさを感じます。

こんな肌にこんな美しさに、叶わぬ願望を抱きます。

| ブシュケの美しい肌に感激 | 2009/07/03 12:08 AM |
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