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アレクサンドル・カバネルの「ヴィーナスの誕生」
 

今回の絵は、あの美と愛の女神ヴィーナス誕生の絵です。女神の白く美しい豊満な肉体と、しどけないポーズが目をひきつけます。





アレクサンドル・カバネル作 「ヴィーナス誕生」1863/パリ・オルセー美術館




1863年のサロン・ド・パリ展に、アレクサンドル・カバネルによって出品された作品です。アカデミックの最高峰の絵画として高く評価され、時の皇帝ナポレオン3世に買い上げられるとともに、1867年のパリ万国博覧会にも出品されたそうです。

主題は「ヴィーナスの誕生」。およそ400年前、イタリア・ルネサンス期に、ボッティチェッリの同名の絵があります。ボッティチェッリは、ギリシャ神話の話のとおりに、海で誕生したヴィーナスが貝殻に乗り、西風に吹かれて、キプロス島の浜辺に流れ着く様子を描いています。中央にたたずみ、恥じらうヴィーナスが、印象的です。

ボッティチェッリのヴィーナスは、当時のフィレンツェで絶世の美女として評判だった、シモネッタをモデルにしているといわれていますが、身体のバランスや、ポーズは古典的な規範に従って描いています。




サンドロ・ボッティチェッリ作 「ヴィーナスの誕生」1485頃/フィレンツェ・ウフィッツィ美術館



それに比して、カバネルの「ヴィーナスの誕生」は、海の上で今まさに誕生したばかりのヴィーナスが描かれています。5人のクピドたちが祝福のために、ヴィーナスの上を舞っています。あわ立つ海面から生まれたばかりのヴィーナスは、古典的な羞恥のポーズをとることなく、輝くばかりの女体を観るもの前に露わにしています。






カバネルの「ヴィーナスの誕生」は、1863年のサロンで大評判でしたが、そのサロンに落選した作品で、後に有名になった作品があります。マネの「草上の昼食」です。


エドゥアール・マネ作 「草上の昼食」1863/パリ・オルセー美術館



この作品は、サロンに落選した作品を集めた落選展に展示されましたが、いかがわしい、不道徳だという痛烈な批判を受けました。当初は「水浴」と題されていたそうですが、中央の女性だけが裸で、男性たちは正式な服を着ています。現代のわれわれが観ても、いかにも不自然な光景です。当然ながら当時も、女神でも神話の登場人物でもない普通の女性が、裸で描かれ日常的な光景のなかに収まった絵となれば、物議をかもしたとしてもやむをえないでしょう。

もちろんマネは、その批判を承知の上で、日常的でリアルな感覚を画面に映し出すことを目的としたにちがいありません。この絵は、批評家たちからは罵倒されましたが、若き有能な画家たちの意識を変革して、新しい絵画運動へと発展していくことになります。モネ、セザンヌ、ピカソらに、大きな芸術的な刺激を与えたのでした。

それに比して、カバネルの「ヴィーナスの誕生」では、神話を主題にして、理想美的な女性の肉体が大胆に表現されています。アカデミック絵画として、大絶賛を受けたわけですが、マネの友人でもある作家のエミール・ゾラからは、大変辛らつな批評を受けたそうです。

1863年のサロンですれ違った、これらふたつの作品、カバネルの「ヴィーナスの誕生」とマネの「草上の昼食」は、一方はアカデミズムの頂点そしてもう一方は、近代絵画の先駆けとして、美術史上に交錯したわけです。そして現代に至って、後者のほうが圧倒的に有名になってしまい、当時の一般的な評価は逆転したことになります。現在この2作品は、皮肉にも、ともにパリのオルセー美術館に展示されています。



アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel)は、1823年にフランス南部のモンペリエに生まれ、1889年に65歳でパリで亡くなっています。1844年にサロンに初出展し、1845年にはローマ賞を受賞、1863年には、フランス学士院会員なるなど、アカデミック画家として成功した人物です。


アカデミック絵画(Peinture académique)は、古くは16世紀イタリアの美術学校に端を発し、17世紀からフランスで発展した芸術アカデミーを経て、とくに19世紀のサロンを中心とした芸術活動における、様式的な絵画をいいます。歴史画、神話画、寓意画を上級の絵画として位置づけ、風俗画、風景画、肖像画を下位に位置づけました。観念的な絵画制作をめざし、写実主義的な絵画と対極の絵画です。


エドゥアール・マネ(Édouard Manet)は、1832年にパリで生まれ、1883年51歳で亡くなっています。1863年の落選展の「草上の昼食」や、1865年のサロンに展示した「オランピア」などの作品で有名な画家です。伝統的な造形様式を踏まえつつ、その前提を否定し、伝統を解体する創作行為、そして明快な色彩、平面的な画面処理など、近代絵画の祖のひとりとして評価されています。








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