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ジェームズ・ホイッスラーの「灰色と黒のアレンジメント 第1番 画家の母の肖像」
 
今回はジェームズ・マクニール・ホイッスラーの「灰色と黒のアレンジメント 第1番 画家の母の肖像」です。




ジェームズ・ホイッスラー作 「灰色と黒のアレンジメント 第1番 画家の母の肖像」1871/パリ・オルセー美術館


モノトーン調の、いわば渋い作品です。ちょっと変わった長いタイトルが付けられています。前半の“灰色と黒のアレンジメント 第1番”は、何かクラシック音楽のタイトルのようで、後半は、ホイッスラーの母親、アンナ・マチルダ・ホイッスラーの肖像画であることをさしています。確かに椅子に坐った老婦人が、真横から描かれ、絵全体が灰色と黒の色面で埋め尽くされています。わずかに見られる顔の赤み色に救われる思いがします。

色調から受ける重厚さ、構図の堅牢性、そして老婦人の清教徒的厳格さが、画面全体を支配する独特の印象を与える作品です。ホイッスラーはアメリカ人で、ロンドンを活動拠点にして、絵画制作に励んでいました。この作品は、その母親と一緒にロンドンで生活した時期に描かれたようです。発表された当初はそれほど注目されず、制作されてから10年以上たって、1883年のパリのサロンに出展された時に、大きな反響を呼び、高い評価を受けたそうです。

画面を抑制された色調でコントロールしようとする意図と、母親が持つ敬虔なクリスチャンとしての精神性を表現しようとする企てが、鮮やかに結実した傑作といえるでしょう。凛とした空気が感じられます。そして普通の肖像画と異なる点は、描かれる人物の表情や陰影でその人の精神性を表現するより、画面全体の色調と濃淡のリズムで、その多くを表現している点です。後の抽象画的な発想が見られます。






ジェームズ・ホイッスラー作 「白のシンフォニー 第1番 白衣の少女」1862/ワシントン・ナショナル・ギャラリー


さてこの絵は、“白のシンフォニー”とあるように、白衣の少女を中心にした白色の響きを意図した作品と思われます。この作品は、前回に触れましたマネの「草上の昼食」と同じに、1863年のパリの落選展に出品されて評判になった作品ですが、「灰色と黒のアレンジメント 1番」に比べると、画面を支配する白色が表現しようとするのは何か、少女の持つ精神的なものは何か、伝わってくる力が弱いような気がします。

白色は、純粋無垢な処女性を表しているのでしょう。少女の足もとにある、狼と思われる毛皮の敷物がそれを強調しているようにも思われます。作者の真の意図は、白衣の少女像を描くことにより、白色の色彩変化のハーモニーを描きたかったのでしょう。事実、当時この絵は、微妙な白色の変化の描き分けが注目を集めたようです。







ジェームズ・ホイッスラー作 「青と金のノクターン オールド・バターシー橋」1872-77/ロンドン・テート・ギャラリー



ホイッスラーは、日本の浮世絵を研究し、とくにその大胆な構図を取り入れているといわれています。また、モノトーンのうっすらとにじんだような表現は、水墨画の影響があるといわれています。同時代の印象派の画家たちのように、鮮やかな色彩による描写は観られませんが、現実世界の再現ではなく、作者の発見した世界、創造した世界を表現することにおいて、相通ずる創作姿勢が観られます。





ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler)は、1834年にアメリカのマサチューセッツ州に生まれ、1903年にロンドンで亡くなっています。享年69歳でした。1855年にパリに居を構え絵画制作をはじめています。1859年にはロンドンにアトリエを構え、パリとロンドンを行き来しながら制作活動をしたそうです。1863年に落選展に出品された「白のシンフォニー 第1番 白衣の少女」が評判を呼び、注目を集めました。代表作に「青と金のノクターン オールド・バターシー橋」や「灰色と黒のアレンジメント 第1番 画家の母の肖像」などがあります。同時代の印象派の作家たちとは一線を画して、地味な色彩のモノトーンの作品が多く、構図的にも浮世絵などの大胆な構図を採用し、後には抽象画的な作品を制作しています。








カテゴリ:印象派 | 13:23 | comments(1) | -
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コメント
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
学芸員さんもしくは先生をされてるのですか?
絵の解釈が分かりやすく親しみやすい言葉で書かれているので
紅茶片手に、こちらを読ませていただいてるとちょっぴり
幸せな気分になります。


実は、事後報告になってしまったのですが・・・
私のブログでこちらを紹介させていただきました。
もし、ご迷惑でしたらおっしゃってください。


| sumile | 2009/08/26 4:03 PM |
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