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オディロン・ルドンの「キュクロプス」
 
オディロン・ルドンの「キュクロプス」です。一つ目の巨人がぬっと現れ、うたた寝をしているガラテイアを覗き見している様子を描いています。ルドンはギュスターヴ・モローとともに、世紀末の象徴主義画家として有名です。






オディロン・ルドン作 「キュクロプス」1914/オランダ・オッテルロー・クレラー・ミュラー美術館




オディロン・ルドンの後期の代表作のひとつです。神話から題材をとっています。キュクロプスというギリシャ神話に登場する、一つ目の巨人族のひとり、ポリュペーモスが、海のニンフのひとり、ガラテイアに片想いをするエピソードを描いています。

画面上部の天空に姿を現した、一つ目巨人のポリュペーモスが、岩の上の花園に横たわるガラテイアを見ています。ポリュペーモスは、恐ろしい人食い巨人とはほど遠く、穏やかで、人の良ささえ感じさせる風貌です。大きな瞳は、恋する想いをあらわすかのように、もの哀しさが漂っています。神話の解釈を、ルドンなりに表現しているのでしょう。

空の雲や、遠景の山、そして近景の岩や花園は、よく観察すると詳細は描かずに、それぞれの大まかな描写を、多様な色のタッチで印象的に表現されています。キュクロプスもガラテイアも最小限の描写にとどめています。これは、ルドン特有の考え方で、“見えないもの”を表現するために、具体的に描出することを避け、色の濃淡によるタッチで、形や奥行きを表わし、自由に想像力を働かせようとしています。

ギリシャ神話のひとつの話から刺激を受けて、ルドンはここで、何を表そうとしているのでしょう。自らの想いを重ねた、哀しき片想いでしょうか。








オディロン・ルドン作 石版画集「起源」掘1883/パリ・国立図書館




ルドンが本格的に、制作活動を始めたのは、銅版画でした。1865年25歳のときです。1868年には、サロンに初入選しています。そして1870年ころから石版画を始め、1879年には初の石版画集『夢の中で』を刊行しています。ルドンの精緻な描写による、幻想的な白黒の世界は評判をよび、“黒の画家”と称されるようになっていました。同時代の印象派の画家たちが、明るい色彩を多用して、自然を描写するのに対して、ルドンは、木炭画や石版画の黒基調による精神世界の描写に専念していました。ルドンの黒の時代です。

この石版画集「起源」もそのころの作品です。ルドンは、その中で「キュクロプス」を描いています。ご覧のように、若い一つ目巨人像です。この青年キュクロプスが、後にガラテイアに恋することになるのでしょうか。一見恐ろしげな相貌ですが、表情はどこかユーモラスです。

30年経った1914年の「キュクロプス」では、精緻で詳細な巨人像ではなく、どこか親しみのある、気のおけない巨人像を描いています。そしてガラテイアをひそかに覗き見る姿は、豊かな色彩の画面にもかかわらず、哀感を漂わせています。ルドン自身の心の変化があるように思います。





オディロン・ルドン(Odilon Redon)は、1840年にフランスのボルドーに生まれ、1916年にパリで亡くなっています。享年76歳でした。本名はベルトラン・ジャン・ルドンといいますが、母親の名前にちなんでオディロンと呼ばれ、終生この名で通したそうです。24歳でパリに出て絵の修業をしますが、数ヶ月でボルドーに戻り、銅版画を学び、やがて石版画を学びます。1879年に初の石版画集「夢の中で」を刊行します。1880年に結婚。2番目の石版画集「エドガー・ポーに」を出し、黒の画家として特異な才能を発揮します。1886年に長男が生まれ、半年で死亡しますが、1889年に二男が誕生します。そのころから画風が変化し、色彩豊かに表現するようになります。象徴主義、あるいは超現実主義絵画の先駆者として活躍しました。


キュクロプス(Cyclops)は、ギリシャ神話に登場する単眼巨人の一族のことで、その名はギリシャ語で丸い眼を意味し、額に丸い眼が一個あることに由来するとのことです。低レベルの神として鍛冶仕事を担い、ゼウスやポセイドンの持物を作ったといわれています。またホメーロスの叙事詩「オデュッセイア」では、旅人を食う粗暴な一つ目の怪物としも登場しているそうです。


ポリュペーモス(Polyphemos)は、その名称は“名の知られた”という意味で、古代ギリシャの叙事詩で、人食いの単眼巨人、あるいは人間として登場しているようです。ホメーロスの叙事詩「オデュッセイア」では、オデュッセウスの航海話の中で、人食いの単眼巨人のキュクロプス族のひとりとして登場します。さらに古代ローマの詩人オウィディウスが、一つ目の巨人ポリュペーモスとガラテイアの恋物語を伝えています。


ガラテイア(Galateia)は、ギリシャ神話に登場する海のニンフで、乳白色の肌をもつ者という意味のようです。ガラテイアは、川のニンフのアーキスと恋に落ちたのですが、一つ目の巨人ポリュペーモスにアーキスを殺され、やむなくポリュペーモスの子を産むことになります。






カテゴリ:象徴主義 | 09:14 | comments(0) | -
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