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ウィリアム・アドルフ・ブグローの「ヴィーナスの誕生」
 
前回は、19世紀フランス・アカデミック絵画のジャン=レオン・ジェロームの作品でしたが、今回も、フランス・アカデミック絵画の大巨匠といわれるウィリアム・アドルフ・ブグローの傑作、「ヴィーナスの誕生」です。





ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 「ヴィーナスの誕生」1879/パリ・オルセー美術館



主題は、ヴィーナスが海の泡から生まれたという神話から採られています。ホタテ貝にのるヴィーナスの絵柄は、古代美術から現れていて、ルネサンス期では、サンドロ・ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」が有名です。19世紀のフランス新古典主義の絵画や、それに続くアカデミック絵画にも、たびたび登場しています。ブグローのこの作品は、その中でも秀逸な作品のひとつで、ブグロー自身の円熟期の傑作として知られています。




サンドロ・ボッティチェッリ作 「ヴィーナスの誕生」1485頃/フィレンツェ・ウフィッツィ美術館


ルネサンスの巨匠サンドロ・ボティチェッリの「ヴィーナスの誕生」です。西風の神ゼヒュロスが、その妻、花の神フローラを抱きながら、生まれたばかりのヴィーナスを海辺に吹き寄せています。岸辺では、ホーラという季節神が裸のヴィーナスにガウンを着せようとしています。愁いの表情を浮かべたヴィーナスは、恥じらいのしぐさを見せています。詩情あふれあたルネサンス美術の傑作といわれています。

ルネサンス期から400年後の、ブグローのヴィーナスは、少し挑発的で官能的に描かれています。どちらのヴィーナスも理想化された女性の裸身ですが、ブグローのヴィーナスは、滑らかな肌合いと柔らかな生身の肉体が感じられます。周りの男女神やクピドたちも肉感的です。

ブグローは、ルネサンス期のさまざまの神話画から、とくにボッティチェッリやラファエロの名画から多くのヒントを得て、美の象徴たるヴィーナスの理想像を描きましたが、それは甘美で官能的な美の極致でした。そしてそれはブグロー自身が考える“美の理想”でもあったのです。絵の印象が、写実的ではあっても、入念に身体の形態や肌の表面を理想的な美しさに仕上げているのです。




ブグローはまた、あどけない子どもの絵や可憐な美少女の絵を、数多く描いたことでも有名です。



ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 「姉妹たち」1901/アメリカ・ウィスコンシン州・ローレンス大学



ブグローの数ある美少女の絵の典型が、この「姉妹たち」です。仲良し姉妹が、写真のスナップショット風に描かれています。眼が大きく、唇のふくらみが目立つ美少女たちです。姉は、こちらに眼差しを向けて、観るものとの感情交流を促すようなしぐさを示す一方、妹は、あどけなく視線をそらしています。ブグローは、アカデミック絵画における理想美とは趣を変えて、現実生活の中の、可愛く、可憐で、あどけない情景を、カンバスに描きとめています。





ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 「クピドとプシュケ」1889/個人蔵



この作品は、神話から取材していますが、無邪気な子どもの情景として描かれています。愛(クピド)が魂(プシュケ)に求愛する寓話が主題です。幼い子どもたちの姿で描かれていますから、接吻を迫るクピドと恥ずかしげなプシュケは、いかにも微笑ましく、愛らしい情景になっています。アカデミック絵画の大御所の真の魅力は、実はこのような大衆受けのする作画志向にあったのではと思わせます。

ラファエロやルノワールのように、ブグローもまた、美少女や母と子、あるいは可愛い幼児を見事なまでに描ける才能を、神から授けられたのでしょう。ブグローの作品は、1200点ほど確認されているそうですが、そのほとんどが美しい女性か可憐な少女だそうです。





ウィリアム・アドルフ・ブグロー(William Adolphe Bouguereau)は、1825年にフランス西海岸の港湾都市、ラ・ロシェルで生まれ、1905年に79歳で亡くなっています。1846年にパリに出て、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)で学びます。1850年にローマ賞を得て、4年間のイタリア留学をし、順調に画家としての地位を築きます。新古典主義を継承して、一貫してアカデミックな絵画を制作しますが、官能的な裸婦像や可憐な少女像などを得意としていました。1888年には、エコール・デ・ボザールの教授に就任し、アカデニズム美術の中心人物として活躍します。やがて急速に台頭してきた印象派はじめ新興絵画運動のかげで、美術史的には忘れられた存在でしたが、近年になり再評価の動きが見られるようです。












カテゴリ:新古典主義 | 14:39 | comments(0) | -
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